第1部:ブローカー選択と執行環境
章 04 · 執行品質:スリッページ、リクオート、実測方法
前章では Last Look が低スプレッドと拒否リスクの間でコストを再分配することを述べた。本章は実務の問い:合理的な条件下で約定されたか? 自分で記録し、比較し、ストレス時に再テストする——宣伝ではなくデータで検証せよ。
スリッページ:大きさと対称性
スリッページ=約定価格−要求価格。健全な A-Book では長期平均はゼロ付近で、正負のスリッページがおおむね対称であるべき。負のスリッページばかりなら内部化や攻撃的ラストルックを疑え。

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- 系統的な負のスリッページは edge を侵食
- データ発表前後:0.1 pip から 2–5 pip への跳ねは珍しくない
- オーバーナイト・週初:流動性低下でスリッページとスプレッドが連動
- EA 注意:バックテストでスリッページゼロは常に公正なブローカーを仮定している
拒否、リクオート、約定率
ボラティリティ上昇時にリクオートと order rejected が増える。スキャルパーで 5% のシグナルが未約定なら、実運用勝率はバックテストと乖離する。記録:試行回数、約定回数、拒否理由(off quotes、invalid stops 等)。
MT5 ログで実測(手動・EA 共通)
実口座またはマイクロロットで 2–4 週間、NFP または CPI を一度含める。口座履歴とジャーナルの約定をエクスポートし、銘柄ごとに:
- 各取引:約定価格−シグナル時の見えた価格→スリッページ(pip)
- 買い/売り別に平均と標準偏差
- 正/負スリッページの比率
- 「データ発表±15分」と「ロンドン/NY オーバーラップ」を分けて集計
- DOM 不可やスプレッド急拡大の回数
日付 | 銘柄 | 方向 | シグナル | 約定 | スリップ(pip) | セッション | 備考
2026-06-06 | EURUSD | BUY | 1.08542 | 1.08545 | +0.3 | ロンドン | 正
2026-06-07 | EURUSD | SELL | 1.08410 | 1.08398 | -1.2 | NFP-5分 | 拡大デスクより:NFP と B-Book スプレッド
マクロ指標前後、チャートは激しい一本足だが実環境はスプレッド数倍・約定悪化・流動性蒸発。0.8 pip edge が発表瞬間に 3 pip コストなら期待値は負——モデル失敗ではなく環境の切替。
ストレス時間帯(EA は回避コードまたは監督)
- 米国主要指標:NFP、CPI、FOMC 前後 15–30 分
- 日次ロールオーバー(ブローカーサーバー時間、水曜トリプルスワップ)
- 金曜 NY 後〜日曜再開:流動性ギャップ
- アジア午後の薄商い
- クリスマス、感謝祭、ゴールデンウィーク等
本节チェック
- 1週間分のスリッページ表があるか?なければ今週から。
- 正のスリッページ比率は 30% 超か?長期ゼロなら環境変更か縮小。
- ストラテジーテスターでスリッページ無効か?手数料+ランダムスリッページで感度分析を。
